ようとう
洋灯

冒頭文

このごろ停電する夜の暗さをかこっている私に知人がランプを持って来てくれた。高さ一尺あまりの小さな置きランプである。私はそれを手にとって眺めていると、冷え凍っている私の胸の底から、ほとほとと音立てて燃えてくるものがあった。久しくそれは聞いたこともなかったものだというよりも、もう二度とそんな気持を覚えそうもない、夕ごころに似た優しい情感で、温まっては滴り落ちる雫(しず)くのような音である。初めて私がラ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 昭和文学全集 第5巻
  • 小学館
  • 1986(昭和61)年12月1日