ちちすぎやましげまるをかたる |
| 父杉山茂丸を語る |
冒頭文
白ッポイ着物に青い博多織の帯を前下りに締めて紋付の羽織を着て、素足に駒下駄(こまげた)を穿(は)いた父の姿が何よりも先に眼に浮かぶ。その父は頭の毛をクシャクシャにして、黒い関羽鬚(かんうひげ)を渦巻かせていた。 筆者は幼少から病弱で、記憶力が強かったらしい。満二歳の時に見た博多駅の開通式の光景を故老に話し、その夜が満月であったと断言して、人を驚かした事がある位だから……。 だからそうした父
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 夢野久作全集11
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1992(平成4)年12月3日