わたしのすきなよみもの |
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冒頭文
こんな事を書くと文学青年じみるが、事実文学青年の古手に相違ないのだから仕方がない。しかも五十近くになって頭の天辺(てっぺん)がコッ禿(ぱ)げて来ているのに恋愛小説なんかアホらしくって読む気になれない。寝がけに読み初めた探偵小説に昂奮しちゃって翌(あく)る朝まで睡むらず、翌る日は終日胃が悪くなって砂を噛むような飯を喰う事が時々あるのだから、嬶(かかあ)が呆(あき)れるのも無理はない。今頃中学校に通っ
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 夢野久作全集11
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1992(平成4)年12月3日