たんていしょうせつのしんしめい
探偵小説の真使命

冒頭文

探偵小説が下火になって来た。曾(かつ)ての勃興当時、作者と読者とが熱狂して薪を投じ油を注いだ炬火(たいまつ)は、今や冷めたい灰になりかかっている。 曾ての自然主義文芸がそうであったように……。 自由民権思想がそうであったように……。 人類の趣味傾向が、かくして遂にドン底を突いてしまったのだ。 明治維新以来、西洋文化の輸入に影響されて日本人の趣味が急劇に低下し

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夢野久作全集11
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年12月3日