ろぼうのミイラ
路傍の木乃伊

冒頭文

私は遠からず路傍の木乃伊(ミイラ)になってしまいそうな気がする。口をポカンと開いた……眼の前の空間を凝視した……。 私は中学を卒業した切り上の学校に行かないが、その中学時代が小説の耽読時代であった。漱石、蘆花、紅葉、馬琴、為永、大近松、世阿弥、デュマ、ポー、ホルムズ、一千一夜物語、イソップなぞ片端(かたはし)から読んだ。二葉亭、涙香(るいこう)、思案外史、鴎外なぞも漁った。 そ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夢野久作全集11
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年12月3日