一 昭和×年四月二十七日午後八時半……。 下関発上り一二等特急、富士号、二等寝台車の上段の帷(カーテン)をピッタリと鎖(とざ)して、シャツに猿股(さるまた)一つのまま枕元の豆電燈を灯(つ)けた。ノウノウと手足を伸ばした序(ついで)に、枕元に掛けた紺(こん)背広の内ポケットから匕首拵(あいくちごしらえ)の短刀を取出して仰向になったまま鞘(さや)を払ってみた。 切先(きっさき