「末期(いまわ)の際(きわ)にタッタ一言……タタタ、[#底本では「、」が脱落]タッタ一言……コレエ……」 万平は板を並べ換える片手間に、奇妙な声を出して頭を振り立てた。洗い晒(ざら)しの印袢纏(しるしばんてん)に縄の帯。豆絞りの向う鉢巻のうしろ姿は打って付けの生粋(いなせ)な哥兄(あにい)に見えるが、こっちを向くと間伸(まの)びな馬面(うまづら)が真黒に日に焼けた、見るからの好人物。二十七八