きんがんげいしゃとめいきゅうじけん
近眼芸妓と迷宮事件

冒頭文

俺の刑事生活中の面白い体験を話せって云うのか。小説の材料(たね)にするから……ふうん。折角(せっかく)だが面白い話なんかないよ。ヒネクレた事件のアトをコツコツと探りまわるんだから碌(ろく)な事はないんだ。何でも職務(しごと)となるとねえ。下らないイヤな思い出ばっかりだよ。 その下らないイヤな思い出が結構。在来(ありきたり)の名探偵大成功式の話じゃシンミリしない。恐ろしく執念深いんだなあ。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夢野久作全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年10月22日