しょうとつしんり
衝突心理

冒頭文

昭和九年四月一日の午前十時頃、神奈川県川崎の警察署へ新聞記者が五六人集まって、交通巡査から夕刊記事を貰っていた。 それは一寸(ちょっと)聞いたところ、極めて簡単明瞭な交通事故であった。 その早朝の三時頃、京浜国道川崎市の東の出外(ではず)れでトラック同志が衝突した。突きかけた方は同県下子安(こやす)、妹田(いもだ)農場の一噸積(トンづみ)シボレーの使い古した牛乳車(トラック)で

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夢野久作全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年10月22日