睦田(むつだ)老巡査はフト立ち止まって足下(あしもと)を見た。黄色い角燈(かくとう)の光りの輪の中に、何やらキラリと黄金色(きんいろ)に光るものが落ちていたからであった。 老巡査は角燈を地べたに置いた。外套(がいとう)の頭巾(ずきん)を外して、シンカンと静まり返っている別荘地帯の真夜中の気はいに耳を澄ましたが、やがて手袋のまま外套の内ポケットを探って、覚束(おぼつか)ない手付きで老眼鏡を