ひとあしおさきに
一足お先に

冒頭文

一 ……聖書に曰(いわ)く「もし汝(なんじ)の右の眼、なんじを罪に陥(おと)さば、抉(えぐ)り出してこれを棄てよ……もし右の手、なんじを罪に陥さばこれを断(き)り棄てよ。蓋(そは)、五体の一つを失うは、全身を地獄に投げ入れらるるよりは勝れり」と……。 ……けれどもトックの昔に断(き)り棄てられた、私の右足の幽霊が私に取り憑(つ)いて、私に強盗、強姦(ごうかん)、殺人の世にも恐ろしい罪を

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夢野久作全集8
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年1月22日