……俺はどうしてコンナ処に立ち佇(ど)まっているのだろう……踏切線路の中央(まんなか)に突立って、自分の足下をボンヤリ見詰めているのだろう……汽車が来たら轢(ひ)き殺されるかも知れないのに……。 そう気が付くと同時に彼は、今にも汽車に轢かれそうな不吉な予感を、背中一面にゾクゾクと感じた。霜(しも)で真白になっている軌条の左右をキョロキョロと見まわした。それから度の強い近眼鏡の視線を今一度