ちいさきものへ
小さき者へ

冒頭文

お前たちが大きくなって、一人前の人間に育ち上った時、——その時までお前たちのパパは生きているかいないか、それは分らない事だが——父の書き残したものを繰拡(くりひろ)げて見る機会があるだろうと思う。その時この小さな書き物もお前たちの眼の前に現われ出るだろう。時はどんどん移って行く。お前たちの父なる私がその時お前たちにどう映(うつ)るか、それは想像も出来ない事だ。恐らく私が今ここで、過ぎ去ろうとする時

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1918(大正7)年1月

底本

  • 小さき者へ・生れ出づる悩み
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1955(昭和30)年1月30日、1980(昭和55)年2月10日改版49刷