ぎょげんき
魚玄機

冒頭文

魚玄機(ぎょげんき)が人を殺して獄に下った。風説は忽(たちま)ち長安人士の間に流伝せられて、一人として事の意表に出でたのに驚かぬものはなかった。 唐(とう)の代(よ)には道教が盛であった。それは道士等(どうしら)が王室の李(り)姓であるのを奇貨として、老子を先祖だと言い做(な)し、老君に仕うること宗廟(そうびょう)に仕うるが如(ごと)くならしめたためである。天宝以来西の京の長安には太清宮

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1915(大正4)年7月

底本

  • 森鴎外全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年10月24日