カインのまつえい
カインの末裔

冒頭文

(一) 長い影を地にひいて、痩馬(やせうま)の手綱(たづな)を取りながら、彼(か)れは黙りこくって歩いた。大きな汚い風呂敷包と一緒に、章魚(たこ)のように頭ばかり大きい赤坊(あかんぼう)をおぶった彼れの妻は、少し跛脚(ちんば)をひきながら三、四間も離れてその跡からとぼとぼとついて行った。 北海道の冬は空まで逼(せま)っていた。蝦夷富士(えぞふじ)といわれるマッカリヌプリの麓(ふもと

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説」1917(大正6)年7月

底本

  • カインの末裔 クララの出家
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1940(昭和15)年9月10日、1980(昭和55)年5月16日第25刷改版