この一篇を我が亡弟に捧ぐ 一 もう四五日経つと、父のおともをして私も珍らしく札幌へ行くことになっていたので、九月が末になると、家中の者が寄り集って夕飯後を、賑(にぎ)やかに喋り合うのが毎晩のおきまりになっていた。 その夜も例の通り、晩餐(ばんさん)がすむと皆母を中心に取り囲んで、おかしい話をしてもらっては、いかにも仲よく暮している者達らしい幸福な、門の外まで響き渡る