なんろ
南路

冒頭文

一 シューッ、シューッ、……ギー。 カッカッカッと揺れながら線路を換え、前の方からだんだん薄暗く構内にさしかかるにつれて、先頭の、重い機関車(ロコモティブ)からは世にも朗らかなカラーンカラン、カラーンカランという、鐘の響が伝って来る。 車内は、降りる支度で総立ちになっている。窓硝子に顔を近よせて外を見ると、遙か前方にチラチラと赤や緑の警燈が瞬き、黒く、夜のような地下の穹窿

文字遣い

新字新仮名

初出

「太陽」1922(大正11)年1月号

底本

  • 宮本百合子全集 第二巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年6月20日