われにそむく |
| 我に叛く |
冒頭文
電報を受取ると同時に、ゆき子は、不思議に遽(あわただ)しい心持になってきた。 若し彼女が、その朝十時から催される或る職務上責任ある会議に、良人の真木が帰京し得るか否かを、それほど案じていたのなら、当然その報知で安心すべき筈であった。 電文には、昨夜F市の発信で「アスアサ九ジツク」とある。 会議の場所は、東京駅からさほど遠くはなかった。従って、九時に列車が到着するとすれば、定刻に充分に間
文字遣い
新字新仮名
初出
「太陽」1921(大正10)年9月号
底本
- 宮本百合子全集 第二巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年6月20日