さんじゅうさんのし |
三十三の死 |
冒頭文
いつまで生きてていつ死ぬか解らない程、不安な淋しいことはないと、お葉(えふ)は考へたのである。併し人間がこの世に生れ出た其瞬間に於いて、その一生が明らかな數字で表はされてあつたならば、決定された淋しさに、終りの近づく不安さに、一日も力ある希望に輝いた日を送ることが、むづかしいかもしれない。けれどもお葉の弱い心は定められない限りない生の淋しさに堪へられなくなつたのである。そして三十三に死なうと思つた
文字遣い
旧字旧仮名
初出
底本
- 現代日本文學全集 85 大正小説集
- 筑摩書房
- 1957(昭和32)年12月20日