きょうどうこうさく
共同耕作

冒頭文

裏のくぬぎ林のあっちをゴーゴーと二番の上りが通った。 とめはいそいで自分のたべた飯茶碗を流しの小桶の中へつけると、野良着へ手拭をしっかりかぶって、土間から自転車をひき出した。 「もう行くか」 「ああ」 炉ぶちのむしろから、年はそうよってないのに腰のかがんだ親父の市次が立って来て、心配そうに云った。 「——めったと皆の衆の前さ、目え立つようなところさツン出るでねえゾ、え

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」改造社、1931(昭和6)年9・10月合併号

底本

  • 宮本百合子全集 第四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年9月20日