あおじろきゆめ
青白き夢

冒頭文

この夜も、明けるのだと思った。 お葉は目を明けたまゝ、底深い海底でもきはめるやうに、灰色の天井を身ゆるぎもせず、見つめたまゝ、 『お母さん!』低く呼んだ。 淡黄色い、八燭の電気の光りのなかに、母親は重苦しくひそやかに動いて、ベッドのそばに手をかけた。 『苦しいのかい。水が呑みたい?』 お葉は、なほ天井を見つめたまゝ、何といってよいか、只悲しかった。 お母

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新小説」1915(大正4)年1月号

底本

  • 素木しづ作品集
  • 札幌・北書房
  • 1970(昭和45)年6月15日