ぶどうすい
葡萄水

冒頭文

(一) 耕平は髪も角刈りで、おとなのくせに、今日は朝から口笛などを吹いてゐます。 畑の方の手があいて、こゝ二三日は、西の野原へ、葡萄(ぶだう)をとりに出られるやうになったからです。 そこで耕平は、うしろのまっ黒戸棚(とだな)の中から、兵隊の上着を引っぱり出します。 一等卒の上着です。 いつでも野原へ出るときは、きっとこいつを着るのです。 空が

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第十巻
  • 筑摩書房
  • 1979(昭和54)年9月15日