かしわばやしのよる
かしはばやしの夜

冒頭文

清作は、さあ日暮れだぞ、日暮れだぞと云(い)ひながら、稗(ひえ)の根もとにせつせと土をかけてゐました。 そのときはもう、銅(あかがね)づくりのお日さまが、南の山裾(やますそ)の群青(ぐんじやう)いろをしたとこに落ちて、野はらはへんにさびしくなり、白樺(しらかば)の幹などもなにか粉を噴いてゐるやうでした。 いきなり、向ふの柏(かしは)ばやしの方から、まるで調子はづれの途方もない変

文字遣い

新字旧仮名

初出

「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社、1924(大正13)年12月1日

底本

  • 宮沢賢治全集8
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1986(昭和61)年1月28日