やまおとこのしがつ
山男の四月

冒頭文

山男は、金いろの眼を皿(さら)のやうにし、せなかをかがめて、にしね山のひのき林のなかを、兎(うさぎ)をねらつてあるいてゐました。 ところが、兎はとれないで、山鳥がとれたのです。 それは山鳥が、びつくりして飛びあがるとこへ、山男が両手をちぢめて、鉄砲だまのやうにからだを投げつけたものですから、山鳥ははんぶん潰(つぶ)れてしまひました。 山男は顔をまつ赤にし、大きな口をに

文字遣い

新字旧仮名

初出

「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社、1924(大正13)年12月1日

底本

  • 宮沢賢治全集8
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1986(昭和61)年1月28日