あま

冒頭文

ブレドガアデで午食(ごしょく)をして来た帰道である。牧師をしてゐる兄と己(おれ)とである。兄はユウトランドで富饒(ふぜう)なヱイレあたりに就職したいので、其運動に市中へ出て来た。ところが大臣が機嫌好く話を聞いてくれたので、兄はひどく喜んでゐる。牧師でなくては喜ばれぬ程喜んでゐる。兄は絶えず手をこすつて、同じ事を繰り返して言ふ。牧師でなくては繰り返されぬ程繰り返して言ふ。「ねえ、ヨハンネス。これから

文字遣い

新字旧仮名

初出

「我等」一ノ一、1914(大正3)年1月1日

底本

  • 鴎外選集 第14巻
  • 岩波書店
  • 1979(昭和54)年12月19日