ししおどりのはじまり
鹿踊りのはじまり

冒頭文

そのとき西(にし)のぎらぎらのちぢれた雲(くも)のあひだから、夕陽(ゆふひ)は赤(あか)くなゝめに苔(こけ)の野原(のはら)に注(そゝ)ぎ、すすきはみんな白(しろ)い火(ひ)のやうにゆれて光(ひか)りました。わたくしが疲(つか)れてそこに睡(ねむ)りますと、ざあざあ吹(ふ)いてゐた風(かぜ)が、だんだん人(ひと)のことばにきこえ、やがてそれは、いま北上(きたかみ)の山(やま)の方(はう)や、野原(

文字遣い

新字旧仮名

初出

「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社、1924(大正13)年12月1日

底本

  • 校本宮澤賢治全集 第11巻
  • 筑摩書房
  • 1974(昭和49)年9月15日