ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化

冒頭文

女がた 一 晩秋(おそあき)の晴れた一日(ひとひ)が、いつか黄昏(たそが)れて、ほんのりと空を染めていた夕映(ゆうばえ)も、だんだんに淡(うす)れて行く頃だ。 浅草今戸の方から、駒形(こまがた)の、静かな町を、小刻みな足どりで、御蔵前(おくらまえ)の方へといそぐ、女形(おやま)風俗の美しい青年(わかもの)——鬘下地(かつらしたじ)に、紫の野郎帽子(やろうぼうし)、襟(

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

底本

  • 雪之丞変化【下】
  • 大衆文学館、講談社
  • 1995(平成7)年7月20日