ほうせきのじょきょく
宝石の序曲

冒頭文

1 狭い、勾配(こうばい)の急な裏梯子(うらばしご)を上り切ったところの細長い板の間は、突き当たりに厚いカーテンがかかっていて、古椅子(ふるいす)や古テーブルなどを積み重ね、片側をわずかに人が通れるだけ開けてある。そこは階下に通ずる非常口で、めったに使うことはなかった。 梯子段に近い明かり取り窓の下に、黒天鵞絨(くろビロード)の洋服を着た盲目の少女が夕陽(ゆうひ)の中の鉄棒の影のよ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 清風荘事件 他8編
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1995(平成7)年7月10日