ぼうふううにおわったいちにち |
暴風雨に終わった一日 |
冒頭文
バルコニーの外は低い砂丘を一つ越して、青空にくっきりと限られた代赭色(たいしゃいろ)の岩鼻岬(いわはなみさき)、その中腹の白い記念塔、岬の先端の兜岩(かぶといわ)、なだらかな弧を描いている波打ち際、いつも同じ絵であった。ただ、その朝は水平線の上が刷毛(はけ)で刷(は)いたように明るく、遠くの沖を簪船(かんざしぶね)が二隻も三隻も通っていくのが見えた。つい近くの波間に遊んでいた数羽の水禽(みずどり)
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 清風荘事件 他8編
- 春陽文庫、春陽堂書店
- 1995(平成7)年7月10日