ラしのふえ
ラ氏の笛

冒頭文

一 横浜外人居留地の近くに生れ、又、其処(そこ)で成育した事が何よりの理由となって、私は支那人、印度人、時には埃及(エジプト)人などとさえ、深い友誼を取り交した経験を持っている。そして彼れ等の一人一人が私に示した幾つかの逸事は、何れも温い記憶となって、今尚お私の胸底に生き残り、為す事もない病臥の身(それが現在に於ける私の運命)へ向って、限りない慰めの源を提供するのである。 時は大正

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本文學全集70
  • 新潮社
  • 1964(昭和39)年11月20日