あるあほうのいっしょう
或阿呆の一生

冒頭文

僕はこの原稿を発表する可否は勿論、発表する時や機関も君に一任したいと思つてゐる。 君はこの原稿の中に出て来る大抵の人物を知つてゐるだらう。しかし僕は発表するとしても、インデキスをつけずに貰ひたいと思つてゐる。 僕は今最も不幸な幸福の中に暮らしてゐる。しかし不思議にも後悔してゐない。唯僕の如き悪夫、悪子、悪親を持つたものたちを如何(いか)にも気の毒に感じてゐる。ではさやうなら。僕

文字遣い

新字旧仮名

初出

「改造」1927(昭和2)年10月

底本

  • 現代日本文學大系 43 芥川龍之介集
  • 筑摩書房
  • 1968(昭和43)年8月25日