じょうがしまのはる
城ヶ島の春

冒頭文

城ヶ島といふと、たゞちに北原白秋さんを連想する——といふより白秋さんから、わたしは城ヶ島を知り、恰度酒を飮みはじめた十何年か前のころ、わたしたちは醉ひさへすれば、城ヶ島の雨を合唱したものである。白秋さんが、三崎から小田原へ移つて何年か經ち、恰も、千鳥の唄をつくられて間もないころではなかつたらうか。 わたしは白秋さんが、かなりながく住んでをられた小田原の天神山といふ明るい盂宗竹(ママ)と芝

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「東京朝日新聞」1935(昭和10)年3月

底本

  • 「鬼涙村」復刻版
  • 沖積舎
  • 1990(平成2)年11月5日