せんうんをかるじょかい
戦雲を駆る女怪

冒頭文

1 露独(ろどく)連絡の国際列車は、ポーランドの原野を突っ切って、一路ベルリンを指して急ぎつつある。 一九一一年の初夏のことで、ロシアの国境を後にあの辺へさしかかると、車窓の両側に広大な緑色の絨毯(じゅうたん)が展開される。風は草木の香を吹き込んで快(こころよ)い。一等の車室(ワゴンリ)を借りきってモスコーからパリーへ急行しつつある若いロシア人ルオフ・メリコフは、その植物のにおいに

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 浴槽の花嫁-世界怪奇実話Ⅰ
  • 教養文庫、社会思想社
  • 1975(昭和50)年6月15日