しょうせつそうろん
小説総論

冒頭文

人物の善悪を定めんには我に極美(アイデアル)なかるべからず。小説の是非を評せんには我に定義なかる可らず。されば今書生気質の批評をせんにも予め主人の小説本義を御風聴して置かねばならず。本義などという者は到底面白きものならねば読むお方にも退屈なれば書く主人にも迷惑千万、結句ない方がましかも知らねど、是も事の順序なれば全く省く訳にもゆかず。因て成るべく端折って記せば暫時の御辛抱を願うになん。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 平凡・私は懐疑派だ
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 1997(平成9)年12月10日