よっかかん
四日間

冒頭文

忘れもせぬ、其時味方は森の中を走るのであった。シュッシュッという弾丸(たま)の中を落来(おちく)る小枝をかなぐりかなぐり、山査子(さんざし)の株を縫うように進むのであったが、弾丸(たま)は段々烈しくなって、森の前方(むこう)に何やら赤いものが隠現(ちらちら)見える。第一中隊のシードロフという未だ生若(なまわか)い兵が此方(こッち)の戦線へ紛込(まぎれこん)でいるから⦅如何(どう)してだろう?⦆と忙

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 平凡 私は懐疑派だ
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 1997(平成9)年12月10日