忘れもせぬ、其時味方は森の中を走るのであった。シュッシュッという弾丸(たま)の中を落来(おちく)る小枝をかなぐりかなぐり、山査子(さんざし)の株を縫うように進むのであったが、弾丸(たま)は段々烈しくなって、森の前方(むこう)に何やら赤いものが隠現(ちらちら)見える。第一中隊のシードロフという未だ生若(なまわか)い兵が此方(こッち)の戦線へ紛込(まぎれこん)でいるから⦅如何(どう)してだろう?⦆と忙