つきのよ
月の夜

冒頭文

村雲(むらくも)すこし有るもよし、無きもよし、みがき立てたるやうの月のかげに尺八の音(ね)の聞えたる、上手ならばいとをかしかるべし、三味(さみ)も同じこと、琴(こと)は西片町(にしかたまち)あたりの垣根ごしに聞たるが、いと良き月に弾く人のかげも見まほしく、物(もの)がたりめきて床(ゆか)しかりし、親しき友に別れたる頃の月いとなぐさめがたうも有るかな、千里(ちさと)のほかまでと思ひやるに添ひても行か

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆58 月
  • 作品社
  • 1987(昭和62)年8月25日