ちんこんか
鎮魂歌

冒頭文

美しい言葉や念想が殆(ほとん)ど絶え間なく流れてゆく。深い空の雲のきれ目から湧(わ)いて出てこちらに飛込んでゆく。僕はもう何年間眠らなかったのかしら。僕の眼は突張って僕の唇(くちびる)は乾(かわ)いている。息をするのもひだるいような、このふらふらの空間は、ここもたしかに宇宙のなかなのだろうか。かすかに僕のなかには宇宙に存在するものなら大概ありそうな気がしてくる。だから僕が何年間も眠らないでいること

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夏の花・心願の国
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1973(昭和48)年7月30日