八幡村へ移った当初、私はまだ元気で、負傷者を車に乗せて病院へ連れて行ったり、配給ものを受取りに出歩いたり、廿日市(はつかいち)町の長兄と連絡をとったりしていた。そこは農家の離れを次兄が借りたのだったが、私と妹とは避難先からつい皆と一緒に転(ころ)がり込んだ形であった。牛小屋の蠅(はえ)は遠慮なく部屋中に群れて来た。小さな姪(めい)の首の火傷(やけど)に蠅は吸着いたまま動かない。姪は箸(はし)を投出