いぶきが彼のなかを突抜けて行った。一つの物語は終ろうとしていた。世界は彼にとってまだ終ろうとしていなかった。すべてが終るところからすべては新しく始る、すべてが終るところからすべては新しく……と繰返しながら彼はいつもの時刻にいつもの路(みち)を歩いていた。女はもういなかった、手袋を外(はず)して彼のために別れの握手をとりかわした女は。……あの掌(てのひら)の感触は熱かったのだろうか冷やりとしていたの