「あおじろきゆめ」じょ |
「青白き夢」序 |
冒頭文
おしづさんが安倍能成君の紹介で、阿母(おつか)さんに連れられて私の許へ來たのは、今から恰度(ちやうど)六年前の春の末だつたらうと記憶してゐます。何でも其當座は毎日のやうに遣つて來ました。それは長い間の病院生活の後で、たとへ松葉杖をついてなりとも人中へ出られると云ふ物珍らしさと、一つは文學で身を立てようと思ふうら若い女の一心からであつたのでせう。朝の間に來て、一日私の宅で遊んで居て、晩に歸る。別に私
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「文章世界」1918(大正7)年7月3日
底本
- 青白き夢
- 新潮社
- 1918(大正7)年3月15日