やどなしいぬ
やどなし犬

冒頭文

一 むかし、アメリカの或(ある)小さな町に、人のいい、はたらきものの肉屋がいました。冬の半(なかば)の或寒い朝のことでした。外(そと)は、ひどい風が雨を横なぐりにふきつけて、びゅうびゅうあれつづけています。人々は、こうもりのえにかたくつかまりながら、ころがるようなかっこうをして、つとめの場所へ出ていきます。肉屋は、店のわかいものたちと一しょに、かじかんだ手で、肉切(にくきり)ぼうちょうをとい

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥」1924(大正13)年1月

底本

  • 鈴木三重吉童話集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1996(平成8)年11月18日