かいがらついほう 001 はしがき |
貝殻追放 001 はしがき |
冒頭文
古代希臘アゼンスに於ては、人民の快(こゝろよし)とせざるものある時、其の罪の有無を審判することなく、公衆の投票によりて、五年間若くは十年間國外に追放したりといふ。牡蠣殼に文字を記して投票したる習慣より貝殼追放の名は生れしとか。 今日(こんにち)人は此の單純野蠻なる審判を吾等には無關係なる遠き代のをかしき物語として無關心に語り傳ふれども、熟々(つらつら)惟(おもん)みるに現在吾々の營める社
文字遣い
旧字旧仮名
初出
底本
- 水上瀧太郎全集
- 岩波書店
- 1940(昭和15)年12月15日