さけぎらい
酒ぎらい

冒頭文

二日つづけて酒を呑んだのである。おとといの晩と、きのうと、二日つづけて酒を呑んで、けさは仕事しなければならぬので早く起きて、台所へ顔を洗いに行き、ふと見ると、一升瓶が四本からになっている。二日で四升呑んだわけである。勿論(もちろん)、私ひとりで四升呑みほしたわけでは無い。おとといの晩はめずらしいお客が三人、この三鷹(みたか)の陋屋(ろうおく)にやって来ることになっていたので、私は、その二三日まえか

文字遣い

新字新仮名

初出

「知性」1940(昭和15)年3月1日

底本

  • 太宰治全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年6月27日