こんわくのべん |
| 困惑の弁 |
冒頭文
正直言うと、私は、この雑誌(懸賞界)から原稿書くよう言いつけられて、多少、困ったのである。応諾の御返事を、すぐには書けなかったのである。それは、私の虚傲(きょごう)からでは無いのである。全然、それと反対である。私は、この雑誌を、とりわけ卑俗なものとは思っていない。卑俗といえば、どんな雑誌だってみんな卑俗だ。そこに発表されて在る作品だって、みんな卑俗だ。私だって、もとより卑俗の作家である。他の卑俗を
文字遣い
新字新仮名
初出
「懸賞界 第六巻第二号」1940(昭和15)年1月20日
底本
- 太宰治全集10
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1989(平成元)年6月27日