デイモンとピシアス
デイモンとピシアス

冒頭文

一 これは、二千年も、もっとまえに、希臘(ギリシヤ)が地中海ですっかり幅(はば)を利(き)かせていた時代のお話です。 そのころ、希臘人は、今のイタリヤのシシリイ島へ入り込んで、その東の海岸にシラキュースという町をつくっていました。そこでも市民たちは、やはりみんなの間からいくたりかの議政官というものを選んで、その人たちにすべての支配を任せていました。或(ある)とき、その議政官の一人に

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥」1920(大正9)年11月

底本

  • 鈴木三重吉童話集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1996(平成8)年11月18日第1刷