ましゅうこきこう ――ほっかいどうのたびより――
摩周湖紀行 ――北海道の旅より――

冒頭文

宗谷(そうや)本線の瀧川(たきがは)と云ふ古い驛に降りた。黄昏で、しかも初めての土地で一人の知人もなかつた。隨分と用意深かく、行く先々の樣子は、旅行案内で調らべておくのだけれども、途中で氣が變つてしまつて、根室(ねむろ)本線へ這入つてみたくなり、乘りかへ驛の瀧川と云ふ處に、周章(あわ)てゝ降りてしまつた。ホームを歩きながら私は驛夫をつかまへて、此町ではどのやうな宿屋がよいかと云ふことを聞かなければ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 現代紀行文学全集 北日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日