よのすけのはなし
世之助の話

冒頭文

上 友だち 処でね、一つ承りたい事があるんだが。 世之助(よのすけ) 何だい。馬鹿に改まつて。 友だち それがさ。今日はふだんとちがつて、君が近々(きんきん)に伊豆の何とか云ふ港から船を出して、女護(によご)ヶ島(しま)へ渡らうと云ふ、その名残りの酒宴だらう。 世之助 さうさ。 友だち だから、こんな事を云ひ出すのは、何だか一座の興を殺(そ)ぐやうな気がして、太夫(たいふ)の手前も、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新小説」1918(大正7)年4月

底本

  • 現代日本文学大系 43 芥川龍之介集
  • 筑摩書房
  • 1968(昭和43)年8月25日