さかなのじょぶん
魚の序文

冒頭文

それだからと云(い)って、僕(ぼく)は彼女(かのじょ)をこましゃくれた女だとは思いたくなかった。 結婚(けっこん)して何日目かに「いったい、君の年はいくつなの」と訊(き)いてみて愕(おどろ)いた事であったが、二十三歳(さい)だと云うのに、まだ肩上(かたあ)げをした長閑(のどか)なところがあった。 ——その頃(ころ)、僕達(たち)は郊外(こうがい)の墓場の裏に居を定めていたので、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • ちくま日本文学全集 林芙美子
  • 筑摩書房
  • 1992(平成4)年12月18日