しんぱん ほうろうき |
新版 放浪記 |
冒頭文
第一部 放浪記以前 私は北九州の或る小学校で、こんな歌を習った事があった。 更けゆく秋の夜 旅の空の 侘(わび)しき思いに 一人なやむ 恋いしや古里 なつかし父母 私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。父は四国の伊予の人間で、太物(ふともの)の行商人であった。母は、九州の桜島の温泉宿の娘である。母は他国者と一緒になったと云うので、鹿児
文字遣い
新字新仮名
初出
「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号
底本
- 新版 放浪記
- 新潮文庫、新潮社
- 1979(昭和54)年9月30日