問題を入れた扇箱 一 「いや、勤まらぬことはありますまい。」 土屋相模守は、じろりと二人を見た。 「勤まらぬといってしまえば、だれにもつとまらぬ。一生に一度のお役であるから、万事承知しておる者は、誰もないのです。みな同じく不慣れである。で、不慣れのゆえをもってこの勅使饗応役(ちょくしきょうおうやく)を御辞退なされるということは、なんら口実(こうじつ)にならんのです。御再考